in-facto

かつて豚骨があった山の話

組織目標が抽象的なのは意味があるらしい

ykpythemind 今回はめちゃくちゃ山に登って気持ちよかったっすね。

osd いや、そう。めちゃくちゃ気持ちよかったです。ロケハンの時からすごい良い気持ちでした。

ykpythemind 今回はトレッキングという作品を作りましたが、なんか普通に面白く撮れた映像かなと。

osd そうですね。

トモヒロツジ なんか俺、まだちょっとわかんないと思ってる(笑)

ykpythemind ほんとですか。信じきれてないじゃん。

トモヒロツジ 映像として明るいし、見た人がどう感じるかわかんないけど、今までみたいにわかりやすく怖いことが起きてるシーンがあんまない。ストーリーは動いてるんだけど、緊張感がないというか。

ykpythemind in-factoチームとしては、脚本作りや映像を実際撮るタイミングでは変に迷走してるところはなかった気がするんだよね。

osd ストーリーとしての方向性みたいなところだけちゃんと決まったあとはスムーズでしたよね。

ykpythemind 構成が一旦決まって、ちょっと肉付けして、オサダくんが儀式のディティールを詰めてくれて、ツジが偶像としての不気味なものを作ってくれるまでの流れが特に迷わなかった。もう俺たちは1つ、これでダメならもう仕方ないと思える感じ。

osd そうっすね。

ykpythemind 意外と「椅子」がバズったことによって、俺らが意図してない曖昧なところとかも、意味を見つけてくれたりするのがあるんだなと思ったよな。椅子の管理人について「なんであんな部屋貸すんだよ」って疑問に対して「定期的に人を泊めないと災いがふりかかるんだよ」って返しているコメントとか。自分たちも物語に隠されている裏の意図に気づく、みたいな。

トモヒロツジ 作品を作り続けてきて、 抽象的な部分のチューニングが3人の中で合ってきているから良いのかもしれない。今までだと、裏に含めた意図まで共通理解を持っておかないと、細かい演出部分のやりかたで方向性が違って議論になるみたいなことがあったから。

osd 今回の作品も多分色々捉え方があると思うんですけど、3人の中でもここはこういう話でしょ、という理解がみんなそれぞれ違うような気もしてて。そこが良かった点なのかもと思います。

ykpythemind 「トレッキング」の主人公たちは絶妙な温度感で呑気なところがあって、かつ若くて、なんか「ちょっと面白いおっさんがいるから着いていってみようか」みたいな気持ちでさえあるのかもなと演じてもらったの見ると思ったりして。あーそっちのほうがしっくり来るかもなと。

osd 役者さんと打ち合わせする時とかも、なんかガチガチにこのセリフ言ってくださいみたいな話をするってよりも、役者で演じてほしい人物像みたいなのを結構話したりとかをしてますね。その人らしいジェスチャーやその実際のセリフも役者さんに任せてアドリブで入れてもらったりとか。そういうのが広がりを持たせてくれているみたいな気がします。

トモヒロツジ やっぱものづくりって人が関わるほど難しくなるんだけど、たくさん人が関わってる中で、舵を取れる範囲で各々の自由にさせるっていうことが、出来上がるものの懐を深くしていくことなんだろうなって思って。

ykpythemind これって、会社の目標とかってこと?(笑)目標設定とか(笑)

トモヒロツジ 組織でバリューを出すための方法。

ykpythemind まあ結構ゴールを抽象的なところに設定して、各々でそこに向かってベストを尽くしてもらわないと、いいものはできないんだよなみたいな感覚はちょっとわかってきたかもしれないですよ。

トモヒロツジ そうね。なんか、ガチガチに決め込んでトップダウンでやるスタイルもあると思うんだけど、自分たちがどういうものを作りたいかと、どうやって物作りしたいかが大事だと思ってて。それでいくと、抽象的なことを楽しむものづくりの方が、自分たちに合ってるなと思うので。なんかようやくそういう心の余裕が整ってきた気が…(笑)

osd 去年撮った壺三部作(調査報告:L市、健康生活 セラピーV、特殊清掃)は誰かが脚本を書いて、その人が思うものを作る、みたいなコンセプトでやってましたけど、もうちょっとしっかり決めないところも増やして話としての広がりや作る速度も、いい方向に変わってるなと思います。

ホラーダーツの旅

トモヒロツジ とはいえ撮る直前は体調も悪くてめちゃくちゃナーバスだったけどね。

ykpythemind いつもナーバスになってんじゃん。

トモヒロツジ 撮ってるタイミングでヤバい人に怒られたらどうしようみたいなのがね……。俺、人に怒られるのがめちゃくちゃ嫌いだから(笑)そういうのを察知するだけでめちゃくちゃ気持ち落ちこむし。

ykpythemind じゃあ、怒られホラーを作りたい。

トモヒロツジ 俺が小学生の頃、インフルエンザでクソ高熱出してる時に見た、障子越しにすげえでかい影の人がやばいぐらいでかい声で怒り続けてるやつを。

osd やだな。

ykpythemind いいかもしれない。

トモヒロツジ 結果撮れてよかったですよ今回。

ykpythemind 今までの中だと不確実性は高い撮影だったかもね。普通に山だから、足元とかコンディションよくないし。

トモヒロツジ そういえば今回の「トレッキング」は、前回の「椅子」の前にプロットとしてはあったんだけど、結局偶像が何だったら怖いのかが詰め切れられなくて、一旦流れたっていう経緯があるね。

osd はい。

トモヒロツジ オサダくんが「豚骨じゃないですか」って言ったことで、全て解決した。amazonで2キロの豚骨を購入して、風呂場で豚骨を切断しながら作ったっていう。

実物は思ったより禍々しい
実物は思ったより禍々しい

osd そうっすね。儀式自体も骨に関連する儀式だし。

トモヒロツジ オサダくんに儀式任せたら、一式考えてきたのを見て、こいつこういう決められた枠のなかで考えを出すの得意なんだと思った(笑)

ykpythemind 枠の中でいろんな試行錯誤が感じられるからね。見てる枠がせっまいけど(笑)

osd 三河安城から小田原までの新幹線でずっと考えてました。

トモヒロツジ こだま乗ってんじゃねえよ。

ykpythemind ……小田原ってなんか場所としていいよね。小田原でホラー撮ってそのまま旅館とか泊まってそのまま旅館で編集するとかいいかもしれない。

osd 小田原で演者募集してもいけますかね。

ykpythemind 地域密着型。

トモヒロツジ そうした時に初めて東京がいかに役者がたくさんいてありがたいか分かるかもな。そうなるなら、本当に撮影チームだけで行って、ストーリー作るとかじゃなくて、1人かくれんぼみたいな、もしやったら怖くなること全部やってみるみたいな撮影にしたりとかどう。

ykpythemind なんだいきなり。

トモヒロツジ 本当に心霊スポット行ったりとかそういう生なものをさ。

ykpythemind あー、前話してたけど、in-factoチームがメタ的に関わるものとかは面白いと思うんだよね。あ、「あなたの町でインファクトがホラーを撮ります・ホラーダーツの旅」これはいずれ絶対やるんで(笑)

トモヒロツジ 見てくれる人が増えてきたから、そういう意味での自由度は格段に上がりそうだと思ってて。そういう協力をしてくれる人、例えば条件付きでおうちを貸してくれる人とかいたら嬉しいな。離れがある家を貸してくれる人とか現れるんじゃないかと思っていて……。うん、もう足を向けて寝れなくなる人がどんどん増える。

ご報告

ykpythemind ここで嬉しいご報告としては、youtubeの収益化を達成いたしました。

osd ですね。

ykpythemind プロのホラー作家として活動が始まったと、言えるわけです。

トモヒロツジ 映像の質感と音には自信があるので、お仕事お待ちしています。

ykpythemind TXQ FICTIONの予算の100分の1くらいで行けるかもなので。テレビ局の方、お待ちしています。

トモヒロツジ 嫌だな。

osd 「トモヒロツジを探しています」作りましょう。

ykpythemind 普通にもっとお金入ったら最高だなあ。

トモヒロツジ 今まで予算の関係で使えなかったようなロケ地とか使いたい。コンクリート張りの部屋で、さながらSAWみたいなやつとかやりてえよ。

ykpythemind 頭とかをパァンってするとかね…。パーンってなると、それはそれだけで良さになる。

トモヒロツジ 俺は最終的にNOPEの血の雨が降るシーンをやりたいんだよ…。

ジョーダン・ピール監督の「NOPE/ノープ」は独自性のあるホラーだ
ジョーダン・ピール監督の「NOPE/ノープ」は独自性のあるホラーだ

ykpythemind あれ、どうやってやってんだろうね。

osd マジで降らしてるんじゃなかったでしたっけ。

トモヒロツジ そうらしいよ。本当に好きだからいつか絶対に撮りたい。

ykpythemind 確かにな、なんかNOPEみたいな壮大さと、ちょっとSFも入った話というか。

トモヒロツジ NOPEはガワはホラーじゃないんだけど、ホラーとして必要なエッセンスが全部入ってる。

ykpythemind 猿らへんとかめちゃくちゃ緊張感あるしね。

トモヒロツジ そうだね。そういえば「椅子」のコメントで最後のシーンについて「ちょっと笑っちゃった」とか書いてくれていたの、嬉しかったな。

osd はいはいはい。

トモヒロツジ 怖さと笑いみたいなのって、意外と隣り合わせだと思ってて、俺はなんか怖すぎて笑っちゃうとか、急にぶっ飛びすぎて笑っちゃうみたいなのを怖さと並べたいと思った部分があったりするから、「椅子」からそういう感情になってくれた人がいたのは、結構嬉しかった。

ykpythemind 出てる人柄とかでもあるよね、NOPEも妹の女の人がファンシーな性格で良かったとこあるし、椅子もこういうカップルいるし実際に見たらウケるよなみたいな感じもあるじゃない。

osd そう、ネットで議論になりそうなタイプ。

トモヒロツジ なので皆さんも我々の映像見て面白いと思ったら全然笑ったって書き込んでください。俺はそれを見て笑顔でいいねを押すので。今回、かなり気にかけてくれてる人も増えてるので、プレミア公開の同時視聴者が何人に膨れ上がるか、今から楽しみです。

osd 確かにそれはありますね。50人ぐらい来てほしい。

ykpythemind 我々も一緒にプレミア公開視聴して楽しみます。それではまた次回。

2024/06/05 収録

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