in-facto

嫌なカップルと椅子

撮影を最適化していく

トモヒロツジ というわけで、今回は何本目だ?15本目か。

ykpythemind そう、なんかちょっと最近わかんなくなってきたから、インデックスをサイトにちゃんとまとめようと思ってて。どこでどういう役者に出てもらったっけ。とか。

トモヒロツジ 確かにそうだね。タイトルと出演者ぐらいあるといいのかもしれない。

ykpythemind 作品IDも欲しい。

トモヒロツジ はいはい、in-factoだから、IFT_001みたいな。

ykpythemind 動画制作には慣れてきたけど本数が多くなってきたから、プロジェクトファイルの管理とかが気になってくるお年頃になってきていて…。

トモヒロツジ フォーマットを作っていくことが自分たちの苦しみを軽減するところがあるからね。

osd 映像と音声を合わせるのもなんとか自動化したいですよね。タイムスタンプで合わせて1つのフォルダに入るようにしないと…。結構あれ探すの大変じゃないですか。

ykpythemind もっと本気でやるなら、タイムコード(※注釈1)っていう規格があって、そのタイムコードに対応した機器で収録すると一元管理できるみたいで。俺らは今1カメで撮ってるけど、複数カメラある場合とか、そういうのを使うっぽい。

(注釈1: SMPTEタイムコード )

トモヒロツジ なんかそういう効率化、規格化みたいなのが結構大事になってきてるなって思わされたのが、今回の撮影の準備だと思ってて。 その結果として分業が明確化されてきたと思ってるんだよな。役者の募集とメールのやり取りはosd君がやって、脚本は俺がやってみたいな。だんだんフローが複雑になってきたから。

osd 無限に時間が必要ですからね。

トモヒロツジ そうそう、今までは友達コミュニケーションでやってたのを、なんか社会コミュニケーションのやり方にしていかないとと思わされる場面がちらほら。

ykpythemind 仕組み化されてないと抜け漏れるよね。

osd そもそもの企画立案から撮影終了までをチェックリスト化していって、上から順に消化していくようにするとか。

ykpythemind そうすると1ヶ月に2本くらい撮影できるようになってくると。

トモヒロツジ NO。これは1か月1本の撮影の精神的コストを下げるためにやるべきだと思ってます。

ykpythemind スループットが上がるんじゃないんだ。夢をでかく持てよ。

嫌なカップル

osd では、今回の映像の話をしましょうか。

ykpythemind 今回、割と役者さん同士でコミュニケーションを積極的にしてもらった撮影で、すごい楽だったなと。

トモヒロツジ そうだね。多少こちらからのコミュニケーションはやっていたものの、気を配りすぎなくても良きようにやってくれている感じというか。全ての現場において、俺らが1から10まで気を配る必要はないなと思ったかも。

osd 任せられるところは任せる。じゃあどういうふうにして任せればここを進めといてくれるのか、というのを考えていくといいのかもしれないとは思いましたね。

ykpythemind 役者さんってやっぱ人とのコミュニケーションがベースにあるなと思ったところで。いや、なんかバンドマン(※注釈2) ってマジでコミュニケーション取らんよなっていう。お前が言うなよっていう話ですが……。

(※注釈2 in-factoチームは全員がバンドマン。バンドマンは挨拶しないし対バンも見ない、物販にもいない )

osd そうですね、今回は会話の掛け合いが結構大きい要素で、喋るところ全部をカチカチに決めてたわけじゃなかったから、当日役者さん同士で「こういう話の流れに持ってきましょうか」みたいな話をしてもらってて。

トモヒロツジ そう。今回演じてもらった量としては元の脚本の2倍くらいあるんだけど、別の意味での意図してなかった緊張感が出て、なるほどって思ったところであるね。

役者さんたちで打ち合わせしている構図
役者さんたちで打ち合わせしている構図

トモヒロツジ 贅沢なのが、役者さんに存分に演じてもらったパートのうち、下手すれば半分ぐらいカットしてるんです。全部使いたかったけど、映像のリズム感を考えた時に泣く泣くカットしたりして。

osd 今までは撮影終わった後、もうちょっと素材が撮れていればこういう絵を入れたかったよねという反省をしがちだったので、今回は贅沢で良かったですね。

ykpythemind 今回は3人それぞれの人間関係みたいなものをあの人たちの中で落とし込みながら演技をしてくれたんだろうと。特にカップル役の2人に関して思う。

トモヒロツジ 例えばサクラ役を演じてくださった楠本さんは、結構細やかに演技の中にシーンの情景とかを落とし込んだりしていて。例えば、今回の撮影場所ってすごく線路の近くだったので、扉を開けたりする時に電車が通る音がするっていう感じで。 特に説明なしで駅の近くなんだよっていう体で進めようかなと思っていたら、さらっとセリフの中に、「駅からも近いし」みたいなことを入れてたりしてて。

サクラ役 楠本奈々瀬(instagram) / ハルキ役 橋本隆佑

トモヒロツジ あとは、2人で掛け合いしてフリーで進行していた演技を、それとなく脚本の流れに戻していく、演技に戻ってくるみたいなことを自然にされていて。演じながら俯瞰的に見てるんだろうな。

ykpythemind カップル役の2人の演技、両方嫌なやつだけど、こういうカップルいるよなぁみたいな謎の共感があってすごかった。

osd 人柄とか、会話から出るその人の威圧的なところや緊張感みたいな、今まで僕らがコントロールして作ってこなかった部分が補われていましたね。管理人役の中尾さんからもめちゃくちゃ役としての嫌さが出てて、全体的に僕らがコントロールしていない部分が結構うまくいったと思いました。

管理人役: 中尾みち雄

「空気の層」を収録する

トモヒロツジ 今回どういうきっかけでこの映像をとることになったんだっけ。

osd ロケーションだけ大まかに決めてから、そのロケーションで怖いことは何かを練っていった記憶があります。

ykpythemind そもそも途中まで全然別の脚本で、もうほぼほぼ決まってたのをガシャーンってしてたね。 山に行くつもりだったのが全然街中になって(笑)。

トモヒロツジ そうそう、もともとは山でロケしようってなって考えたんだけど、なんかハマりきらなかったんだよな。それでゼロベースで会話を始めたときにosdくんが「椅子が全部ひっくり返ってる家」の話をぽろっと出してきたはず。

osd うんうん。そうっすね。

ykpythemind 東京近辺で借りれる部屋で、なかなかイメージに近い場所がなかったりとかして。それこそ、osdくんが初めに出した「家の中の椅子が全部ひっくり返ってる家」を再現するためには、結構広い家を借りないと成立しなかったから、同じモチーフから辻が出した、「一つだけ降ろしちゃいけない椅子がある家」の案に収束したよね。場所問題はデカいね。

トモヒロツジ 今回も実はすごい狭い部屋だから、管理人役の中尾さんとか、出番がない時間は外に出てもらってたりとか。

ykpythemind 本当申し訳ない。この辺が解決できたらもっといろんなものを撮りたいんですが。とはいえ、ドラマ作るならよいりロケーションが大事になってくるけど、ホラーならその辺の予算感抑えながら撮れるところは面白いところではあるっすね。

トモヒロツジ うん、なんか一貫してin-factoはそうだと思うけど、割とワンセンテンス決めたらそれで収束するようなものを撮ることが多いから。意外とそれで成り立つのがホラーのいいところかもしれない。

ykpythemind そう。そういえば今回の演出といえば、出来た映像を2000年代のビデオカメラでもう1回撮ってるっていう。何を言ってるんだって話だと思うけど、ここに画像が貼られますので(笑)

傍目にはまったく意味の分からない作業
傍目にはまったく意味の分からない作業

ykpythemind 書き出した映像をもう1回古いカメラで映像を撮り直すっていうことをしていて、 今回なんと映像が15分あるんで、それを撮るだけで15分かかるっていう。

osd 多分3回くらい撮り直してますよね。それだけで45分だし、プレイバックもあるから……。

ykpythemind スマホでとかで撮って加工したのではない画質になってるのは、本物の力を感じる。結果としては良かったと思うけどね。

トモヒロツジ もともと今回は、 最後の撮り直しに使ったカメラで本編を撮ろうとしてたっていう話があったんですよね。

ykpythemind 古いビデオカメラで撮影時も撮ろうと思ったけど画角の問題とかあってうまく使えず。結局いつも使ってるモダンなカメラで撮影したけど、新しいカメラだとリモートで録画開始できるっていうのが大きな利点で、それで結構乗り切れたところはある。

osd 撮ってる映像をワイヤレスでスマホに飛ばして、それを見ながらタイミングよく部屋に入ってきてもらったりみたいなことをしてましたね。

トモヒロツジ なんだっけ。古いカメラについては、そのままのフォーマット(テープ)だと大変だから、SDカードにレコードできるような機材も準備してたよね。

ykpythemind そう、tapeless camcorder とかでYoutubeで調べると出てくるんだけど。古いカメラの入出力部分だけ使ってテープに録画せずにSDカードに収録するっていうのをやってる外人さんがいっぱいいて。

osd そうですね。結果古いカメラは使わなかったけど。とはいえ、古いビデオカメラで映像を直撮りするっていうフェーズを踏んだことが最終的な完成度に寄与しているような感じがしますね。これって、音楽で言うところのスティーブアルビニ(※注釈3) の録音みたいなことだと思うんですが。

(※注釈3 アメリカの音楽家・レコーディングエンジニア。エンジニアでの代表作はNIRVANA『In Utero』など。録音の際に楽器ではなく壁にマイクを向けるなどの独創的な逸話が多い。)

トモヒロツジ 1回空気を挟む。デジタルでやってるから、アナログな揺らぎを与えるために映像に1回空気の層を挟むといい感じになるっていう嘘みたいな話。

ykpythemind そうね、デジタルを一回アナログな光としてアウトプットして、それがもう1回デジタル化されることが大事というか。

トモヒロツジ 大体ざっと振り返った上で、 osdくん的に今回の映像どうっすか。振り終わって。

osd 撮影終わったあと各自家に帰ったりした後に終電終わりくらいから編集しはじめて、ちゃんと朝くらいに15分の映像ができたのは、進行としてよかったかなと。映像の合成とか、今までにないチャレンジをした上でそこらへんの時間まで収まったっていうのは、なんかレベルが上がっている感じはあった。

ykpythemind 動画編集でも、Youtubeで教わったpancake timelineっていうテクニックを使ってみてて。今回あんま意味なかったけど(笑) もっとカット数多いやつとかでやると編集早くなって効果的そうだなぁって手ごたえはあったね。

トモヒロツジ 元の脚本を決めたとはいえ、役者がそこをしっかり補完してくれたから、あまりテイク撮り直すとかもなかったし、スムーズだったね。

ykpythemind いや、ありがたかった。あと固定カメラだったというのはね、でかい。パラノーマル・アクティビティってやっぱ神やわ。考えたやつ神過ぎる。

トモヒロツジ あれね、低予算の中でっていう結果でああなったのかもしれないけど。

ykpythemind いや、絶対そうだよ。

トモヒロツジ めっちゃ合理的なんだよな。結論。カメラ変えないことの楽なところって、あとからカラーグレーディングしなくていいことなんだよね。カラーグレーディング自体そこまで大変ではないけれども時間は一定の時間かかるから。

ykpythemind カットが変わったときに撮ってるカメラ変わったなと気づかれるのは見てる側の没入感を削ぐから、カラーグレーディングは結構大事よね。

トモヒロツジ 今回、見れる映像でありながら、今までなかった人間の会話から生まれる嫌な部分みたいな、引き込まれる感覚がある映像になったのではないかなと。見てくれた皆さんがどういう感想かわかんないですけど、バズらねえかなこれ。

ykpythemind 無理そう(笑)

osd まぁ粛々やっていきましょう。

トモヒロツジ はい。ではまた次回の映像で。

2024/04/30 収録

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