ロールプレイング
ykpythemind 今回は、「セラピー」に出演してくれたオサダくん(osd)がゲストとして来てくれています。
osd はい、osdです。よろしくお願いします。
ykpythemind よろしくお願いします。
トモヒロツジ よろしくお願いします。
ykpythemind じゃあ、今回の作品はどうでしたか。オサダさん。
osd いや、そうっすね。今までも関わってはいたけど、作る段階から関わるみたいなのがあんまなかったんで、そこから一貫してやれたのは結構面白かったっす。こんな感じで作ってるんだ、みたいな。
ykpythemind 確かに。
osd 作品としても、今までに出てるやつとはちょっと毛色が違う感じでできたし、撮影も面白かった。
ykpythemind なんかもう撮ったのがはるか昔のことのように思えてしまうよ(笑)
osd 何日前に撮ったんでしたっけ。
ykpythemind 3日前。まだ公開してないのにもう2か月前くらいに撮ったんじゃないかってくらい気持ちが解離してるんだよ(笑)今回は怪我したし。さて、今回の話の趣旨はどういうことなんですかツジさん。
トモヒロツジ 今回の話の趣旨はですね、登場人物3人がそれぞれが自分の意思を何かしら持っているときに、それぞれが想像していた3つのゴールがあったはずなのに、そのどれでもないところに行き着くってのが結構怖いんじゃないかっていうのがプロットを考える段階で出てきてて。
ykpythemind うんうん。
トモヒロツジ なおかつ、会話劇っていう、in-factoがまだやってない領域の話があったので。逆に会話劇だけで作れないかというのがテーマだったね。
ykpythemind そうだね。なんか3人でグループカウンセリングをしていて、お互い自分の傷を癒やすっていう共通の目的を持っているっていう舞台を思いついたんだけど、どういう話をするかっていうところがなかなか煮詰まらなくて。結果的にGoogle Meetを繋いで3人でロールプレイしてやってみよう、みたいになった。
トモヒロツジ 3人とも近しい人が何かしらの方法で自殺していて、それについての受け止め方を話に来るっていう大まかなプロットで、話としてどういう落としどころをつけるのかっていうゴールなしで、1回ロールプレイングしてみたわけですね。
osd あの時間、奇跡でしたね。大まかな話の最終的な着地点みたいなのは調整とかしましたけど、コアになってる部分はそんなに変わってない。
トモヒロツジ ね。そのロールプレイを録音してあって、そこから文字起こしして脚本を書いてて、半分くらいはそのまま使ってるから、もう言ってしまえば、あの映像の話を3人でしてたと思ってもらえば大丈夫(笑)
ykpythemind そうね。これさ、言うまでもなくハイコンテクストだよねえ。別に反省でもなんでもなくて、これはホラーなのか?みたいな気持ちもあります。
トモヒロツジ ジャンルとしてはホラーだと思うんだけど、あんまり映像的じゃないから、分類しづらいものに見えるところはある気はする。こういうホラー小説はいっぱいありそう。
ykpythemind 確かに。これ、ロールプレイしてる時にめちゃくちゃ空気悪くなったよね。
osd そうですね(笑)
ykpythemind ツジとか、俺、普通にイライラしてたもんな。話してたら自分はイライラする役なのかなって思ってたら、なんか気持ちが入ってきて普通にイライラしてきてた(笑)
トモヒロツジ 本当にそのままの空気感を、なるべく産地直送でパッキングしておりますので。
osd 話してる口調とか、言葉選びとかは、やっぱその人が話してることじゃないと、作り物っぽくなるという気がします。
トモヒロツジ 若干脚本で調整したけど、今回はin-factoの3人がそのまま本人役で出ている映像なので、基本的には3人それぞれのパーソナリティーがそのまま役柄に出ているかなとは思いますね。ロールプレイングのときからそういう気配があったところが面白かった。この映像の中でいう、「精神的な死こそ死である」っていうツジの立場と「肉体的な死こそ死である」っていうユキト(ykpythemind)の立場っていうのは割と本人のそのままが出てるよね。
ykpythemind 俺、映像出るのすげえ嫌なんだけど(笑) 今回は自分の役とかを他の人にやってもらうとか一切考えなかったもんな。それだったら絶対自分がやった方がいいだろうと。
osd 他の役者の人に頼むとして、その人が噛み砕けてないことを喋ってもらうことになっちゃうから、結局自分たちが演じるしかなかったっていうところになりそうですね。
ykpythemind 俺、 東京拘置所の話をホラーの中に入れるのはマジでin-factoだけだと思ってるから。
トモヒロツジ そうですね、映像を見てくれた方が、どこにどれぐらい引っかかり覚えたかわかんないですけど、明らかに2か所ぐらい意味わかんないこと言ってるところあるんですよね……
osd そうっすね。
トモヒロツジ 突然ユキトがオサダくんの喋ったことに対して、全然関係のない東京拘置所の話を持ち出して、「でも、すごく悲しかったですね。」って締めるセリフがあるんですけど、あれはロールプレイングしてる時に、急に言い出したやつをそのまま使ってます。
ykpythemind それが1番ホラーだったんじゃないかっていう。俺、誰かに言わされてた説あるからな。あれ。
トモヒロツジ ロールプレイングしてる時、何言ってんだろこいつ。って思いながら聞いてたから、見てくれた人もそういう気持ちになってくれれば、それは正解ですね。
osd まっとうなことばっか言い続けてるのって、なんか誰にも感情移入できないし、説教っぽくなってきちゃう気がします。
ykpythemind まあ、なんか題材は重いけど、これは重いものとして見るもんじゃないなって思うからねえ。話の中の事象はシリアスなのかもしれないけど、見終わった後に、気持ちとしてめちゃくちゃシリアスになるようなものを作りたいわけではないからね。
トモヒロツジ それはマジで考えてましたね。俺結構、撮る直前までこれはちょっと攻めすぎてるんじゃないかと思ってナーバスだったけど。
ykpythemind お前いつもナーバスになってんじゃん。
トモヒロツジ センシティブなことについて喋りすぎてる映像になるかもって不安だったけど、完成して見ると、わりかしフィクションとして楽しめるんじゃないかなっていう感じはしてます。
osd そうっすね。さっきの東京拘置所の話とか、ツジさんが肉を食べないくだりとか、大学院の話とか、あの関係ない話の意義って、話している内容が全部わかっちゃうと不気味さも薄れるし、何も面白くなくなる、っていうのを防いでるんだろうなって思います。視聴者の人にどれだけ理解してもらうかのバランス感覚みたいなのを考えた記憶があります。
字幕の情報量
トモヒロツジ ハイコンテクストなことを喋ってるので、絶対に映像だけじゃ伝わらないなと思って、今回は字幕を入れたんですよね。
ykpythemind そう。ポッドキャストをやっているオサダくんの目の前で言うのは良くないですけど、自分は文字がない状態で耳だけで聞くものは結構聞くコスト高くて聞けなくてですね。でも字幕があるコンテンツは飛ばし飛ばし高速に見ることができるみたいな。
トモヒロツジ うんうん。
osd そのポッドキャスト ※1 を一緒にやってるカヤハラさんと、そういう感じの話したことがあって。カヤハラさんは音楽のライブに集中できないみたいな話をしてて。映画とかにもあんま集中できないんだけど、漫画はめっちゃ集中できるみたいな。ライブとか映画とか、基本的に自分のペースでできないじゃないですか。早くするにも遅くするにも。だから集中力途切れちゃうんじゃないかと思ってて。
※1 undrcast は音楽をはじめとするカルチャーや日々のできごとについて話すポッドキャストです (Twitterより)
トモヒロツジ はいはいはいはい
osd 自分も、邦画でも字幕がない映画見るの苦手なんすよね。字幕が画面上に出ててそこを読むと概念というか、言ってる内容が入って来やすいみたい。
ykpythemind そうね。字幕付きで見る映像って、限りなくコマ数の多い漫画って感じ。
トモヒロツジ 音声だけだと、音を脳の中で文字に変換して、日本語であれば、それを漢字に変換するっていうことをしなから聞かなきゃいけないじゃん。ラジオってそこまで密度が高くない、雑談に近い温度感だから多分それで聞けるんだけど、今回みたいに情報を詰め込んだものだとやっぱり文字で出さないと見るのキツそうだよねって。
ykpythemind 字幕入れるの大変そうだったっすね。俺が爆睡しとった隣でツジが3、4時間ぐらいかけて入れてた。今回の撮影は終電で絶対帰るとか言って編集始めたら朝9時に帰ってったから(笑)
トモヒロツジ 俺の当初のプランでは終電までに完パケしてたはずだったんだけどね(笑)やっぱりね、テキスト量が多かったので、字幕のタイミングとか、テンポとか表示するテキストの量とかは、すごく考えながら入れましたね。
ykpythemind 後から見て不自然じゃなかったね。たしかに。
トモヒロツジ 字幕って今回は情報の補足として入れてるけど、そもそもアクセシビリティ的な面もあるじゃんね。例えば、音が聞けない人が見るとか。そういう人でも楽しんでもらえるようにって考えると、ちゃんと映像のリズムと合わせたところで出してあげなきゃいけないなと思ってた。けど、まあこんなに時間かかるとは思ってなかったから新しい発見でしたね。
死が迫った人の声
ykpythemind 今回1番でかかったのは俺がツジとオサダくんに殺されかけたっていうところだと思ってるよね。
トモヒロツジ あれね、すごかった。
ykpythemind びっくりするぐらいびしょびしょになったし、普通に怪我したし。船出ってなんなの?マジで(笑)
osd なんか腕痛めてましたね。
ykpythemind どっかに強く当てたっていうよりも、映像見返して見るとほんとに抵抗してるから、多分ちょっと肘外れたんだと思う(笑)
トモヒロツジ あのユキトが死ぬシーン完全な1発撮りなんすよね。
osd そうっすね。
ykpythemind 撮る直前に、ツジが、普通に苦しくなるまでやるから。ってこと言うから、ほんとに怖くて。ツジに押さえられて怖い思いするくらいなら自分で行ったれくらいの気持ちでやってたよ。
トモヒロツジ バケツに頭突っ込んで苦しんでる人って、こういう声出るんだって知れたのは本当に良かったですね。
ykpythemind あれは発明だったね。演技じゃ絶対出ないじゃん、あんなん。
トモヒロツジ だと思うよ。アレだって逆に陳腐にも聞こえかねないからね。でもあれがリアルなんです。本当に苦しんでた人の声なんですね、あれが。
ykpythemind しかも何がひどいって、その1発撮りのテイクでオサダくんちょっと笑ってんだよね(笑)
osd ちょっと頑張って笑わないようにしてたんですけど。ここら辺以降現場でずっと笑ってた気がします(笑)
ykpythemind もはやちょっとサイコパスみたいになってたもん。
トモヒロツジ はい、そんなわけで、今回は全面的にオサダくんに手伝ってもらったわけなんですが、オサダくん、in-factoの正式メンバーとして活動してもらうのはどうでしょう。
osd あ、はい、僕でよければ。はい。
トモヒロツジ ありがとう。よろしくお願いします。この記事が公開される頃には、サイトのメンバー一覧にオサダくんの名前も載ります。
ykpythemind まあ、in-factoはコミュニティーなんでね。どんどん増えていくんで。
トモヒロツジ ではまた次のホラーで。
2023/04/20 収録