in-facto

裏表〜GW大特別編〜

表と裏、裏と表

ykpythemind ゴールデンウィーク、大特別編。今回の作品のタイトルは、どう捉えればいいんでしょうか。

トモヒロツジ 裏表っていう言葉の前に、ちょっと余白があるタイトルなわけで。その余白部分が何なのか色々考えてくれたら面白いかなと思います。

ykpythemind 今回は、一応関連性のある2つの作品を作るっていうとこが結構ミッションではあったね。どっちが「  表」だったか「  裏」だったか、毎回分からなくなるんだけどさ。

osd 最初話してたときのイメージとは逆で、画面が明るいのが「  裏」って覚えてます。

ykpythemind 画像が終始暗いのが「  表」っていう。

トモヒロツジ 逆にすることの面白さみたいなのをちょっと考えたけど、表裏っていう言葉には深い意味はないので(笑)

ykpythemind 今思うと上と下とかでもよかったかもしれないよね。

トモヒロツジ あー、なるほど、確かにまあそれも1つ示唆的ではあるな。

ykpythemind 今回はツジが原案を持ってきたよね。手が日常でずっと見えてて、主人公がそれを振り払ったら、実は高いところでしがみついてる人とつながっていて、振り払われた人が落ちてくるみたいな。

osd これ話してたのってセラピーのプロットを考えてたときですよね。

トモヒロツジ 確かそう。セラピーの撮影と並行しつつやってたね。なんで並行したかってことなんですよ。なんでだと思いますか?撮影期間のスパンが短すぎるからですね。

ykpythemind 自分で答えんなよ。

トモヒロツジ とにかくスパンが短い。

ykpythemind いや、やりたかったから、でいいじゃん!(笑)

トモヒロツジ 準備期間が短い中この原案で良いんじゃない?って言ったら「これだけだと面白くないから、もうひとひねりほしい。2本撮ろう」って言われた時はもう。俺がリアルで会ってたら、多分首絞めてたと思う。

ykpythemind 首締めるんじゃなくて水に沈めるんじゃない?

トモヒロツジ セラピーの撮影現場でその話が出てたら、お前の頭を押さえる手を緩めなかっただろうね。俺は(笑)

osd 結論としては2本撮らないといけなかったんですよね。

トモヒロツジ 原案の手のストーリーだと、自分たちがin-factoっぽいと思ってる要素が足りなくて。2本撮って相互に補完し合う映像にすればいいんじゃないとなったのでね。

ykpythemind 「  表」の方は無の空間というか、無のところで無のものにしがみついているみたいなところを撮りたくて鉄パイプとか買ってやったけど、なかなか難しかったね。

相変わらずDIYでしがみつくための鉄パイプを作っている……
相変わらずDIYでしがみつくための鉄パイプを作っている……

osd そうっすね。

ykpythemind イメージしたのが、「Curve」っていう外国の短編のホラー作品みたいなもので。いきなり目が覚めたらなんかすげえ斜めのところにいて、ずり落ちそうになるけど、めっちゃ必死に耐えるみたいな映像で。質感が自分らのより明らかにすごいんだよねえ。

トモヒロツジ なんか目指してるものが自分らとは違う感じもあるけど。

osd ちゃんと景色の全体像が見えてて、下に落ちたら絶対終わりやろみたいなのがいいですよね。ぱっと目に入ってすぐわかるような環境にいると緊張感がやっぱ違う。

ykpythemind 確かにね。今回は撮影技術の関係で引っ張られるっていうアイデアに落ち着いたけど、引っ張られるよりは高いところから落ちるほうが、位置エネルギーで人は死ぬから。物理的な怖さがあったかもだね。

トモヒロツジ なんかより不可逆性があるような感じがするよね。絶対に助からなさそうさが。

ykpythemind 物理の話だ。「……それって電車の速度とかと同じくらいで地面にぶつかった、っていうことですよね」

osd それはもういいもういい(笑)

トモヒロツジ 「……私は肉を食べないんですけど」※1

ykpythemind もうダメだ。この3人が会話すると、会話にならないかもしれない。

※1 in-facto「セラピー」の台詞より

作品の接続と連続性

トモヒロツジ ……せっかく2本素材を撮るなら、それぞれ1本ずつだけ見てもある程度完成してる作品にしたくて。根底のテーマから2つ派生した作品みたいな立ち位置にしたかった。あと単純に本数が多い方がいいしね。2倍になるし。

ykpythemind 本数稼ぎだったってことですか。じゃあ「Delivery」の第2段として「Delivery 2」作ろうよ。(笑)最近すげえ考えてて。1は置き配される側だったけど、2は置き配に来る配達員の視点に立ったバージョンを。

Deliveryは僕らが初めてドラマ風の映像を作った思い出の作品だ。
Deliveryは僕らが初めてドラマ風の映像を作った思い出の作品だ。

トモヒロツジ なるほど、置き配する側も同じ怪奇によって怖い目に遭うみたいな。

osd 同じ時間軸とか空気の中で別のことが起きてる2つの作品があることで作品の空間がより広がるみたいなのいいですよね。

ykpythemind 前日談みたいなのが「2」に出てくるみたいな構成ね。

ykpythemind   裏」について話すと、裏の絵作りは結構怖いと思ってて。それができたのは今回よかったなと思う。

トモヒロツジ 割と殺風系な部屋の中のカメラワークだったりとか、カットワークがよかったよね。

ykpythemind 俺、途中手が出てくるとこ未だに怖くてビクってなるんだよね。「  裏」は友達のジンくんが出てくれたけど、ジンくんが別の部屋に行ってるタイミングでカットが切り替わって手がいるみたいな。あそこは全然意図してなかったんだけど流れで見てみると結構不気味になる。

osd 「  裏」は結構音をちゃんと出して怖がらせに行ってる感はあると思うんですけど、あそこの部分は特に音とかも出してないですよね。

ykpythemind 怖いの来る予感がないから急に怖いとかあるかもね。

osd 多分視聴者側はジンさん目線で見てて、ジンさんが認知しないタイミングでなにかが近づいてきているというのが、キモいんじゃないかなと。

トモヒロツジ うんうん。

osd なんか、手だけ机からぴょって出てるやつあるじゃないですか。あれとかはちょっとかわいい感じになっちゃいましたよね。あ、手いる(笑)みたいな。

トモヒロツジ そういえばBGM。表と裏がいわばループものだなって側面があると思ってて、それをBGMで表現できたら面白いんじゃないかと思っていわゆる循環音を入れたらどうかって言った気がする。

osd そうっすね。20mシャトルランで流れてるBGM、上がって下がってみたいな循環音ってキモいよねって話しましたね。それを「  表」で鳴らし続けて、「  裏」の最後でもその音を流すことによって、視覚だけじゃなく耳で聞いて分かるようにしたのは結構良かったなと思いますね。

ykpythemind あのシャトルランの音聞いて、研究して作ったね(笑)8分の12拍子と8分の13拍子の繰り返しみたいな。

osd あと、牛の出荷の音も入れましたよね。

トモヒロツジ 牛の出荷音ね。あのブザーみたいな音だけど、あれは何かに引っ張られるっていう現象を条件づける音があった方がいいんじゃないかっていう話が出て。牛を出荷する音とか別に実際はないんだけど(笑)

ykpythemind マジかよ。あるんだと思ってたよ俺。

トモヒロツジ 牛がベルトコンベアとかに並んでてさ。ブーって鳴って出荷されていくんだよ、ない話だけど(笑)

ykpythemind お前農学部だろ。プライドないんか。

重大発表

ykpythemind これをゴールデンウィークに撮るっていうね。

トモヒロツジ そうですよ。

ykpythemind 今日ようやく普通の生活に戻ってきた感じだったわ俺。今日月曜日だけど普通に嬉しいもんね。

osd 日常がマジで戻ってきた。僕もなんだかんだ先週もバタバタしてたんで、今すごい家が居心地いいですね。

トモヒロツジ なんかやっぱね、2日まるまる撮影編集してると時間過ぎたな〜って感じあるもんね。あ、そういえばちゃんと2日分の撮影と編集、終電で終えられたというのはかなり良かった。

osd 前までも編集スピードは上がってきてたけど、できることが増えた分音声の編集とかを凝ったりカラーグレーディングしたりする時間が増えた感あったけど、今回はそこもやりきった上で終電で帰れた気がします(笑)

トモヒロツジ 映像を撮った時点で完成形が見えてたところがあったからね。

osd マスターショット ※2 の話とかもありますね。

※2 1つのシーンにおいて基本の位置から撮影されたショットのこと。これをベースに別のカットを挿入して映像を組み立てていく。

ykpythemind やっぱ、これ撮っといてよかったなみたいなショットはもちろんあるし、その中でなんであのショット撮っておかなかったんだろうって後悔することもあるし。まあ撮りこぼしは少なくなってきてると思うけど。

トモヒロツジ うん。

ykpythemind 撮ってる時は不足してるものに気づけないよね。最終的に撮った素材を並べてみないと。カット単位で撮るのに精一杯で前後の繋がりを意識できてない。

トモヒロツジ 一回脚本作ったものに対して、撮影するにあたって最適化するために、全然ストーリーと違う順番で撮ったりするからさ。常に頭の中で1本のタイムラインを想像しながらやる難易度が高いよね。

ykpythemind 深夜ドラマとかって意外と映像が繋がってないんだよね。あんまり予算がかかってないのか。しっかりお金かかってる映画とかって、やっぱり観客を現実世界に戻さないような映像の基礎みたいなのがすごいできてるんだなって思うね。

osd 僕たちも毎回着実に経験を積んできてるのはすごいと思いますよ。

ykpythemind そう言われれば、ちょっとホラー以外の映像の仕事したいもんね。

トモヒロツジ 真の映像チームになるか。ホラー制作チームではなく……。

ykpythemind また違うYouTubeチャンネル作らないと。

osd 僕もPC組みましたから。

勢いは大事
勢いは大事

トモヒロツジ そういえば各々が自作PC組まないというのもあったね(笑)。今回できなかったけど、Blenderを使った3D合成をするために。

ykpythemind そうなんだよね。やっぱもっと映像の幅を広げるために、3Dできると遥かに幅広がるなと思って。

osd そうっすね。

ykpythemind そのためにはマジでハードウェアの良し悪しが関係してくるからね。俺が試しでBlender作った映像、10秒くらいのものをレンダリングするのに普通に2時間ぐらいかかることが判明して画質を落としまくって書き出したから……。

osd みんなで秋葉原行きましょう。

ykpythemind ……ここで重大発表があるんですが。

トモヒロツジ はい。

ykpythemind なんとin-factoは次回から三部作の制作が決定しました。

トモヒロツジ あー、宣言しちゃった。

ykpythemind 次から作る三部作で、第1シーズンを終わろうと思っています。しかも、藤本くんも復帰してくれます(笑)

トモヒロツジ 自分たちの描いていたストーリーとして今回たまたま2本セットっていうものが撮れたから、もう1歩踏み込もうと。その三部作を公開し終えるくらいには、ちょうどin-factoを撮り始めてから1年経つんですよね。

osd まずはそれをもってin-factoシーズン1の区切りとして、シーズン2に向かっていくということですね。

ykpythemind シーズン1が終わってないのにシーズン2が決定してるっていう素晴らしさね。

osd 区切りって言っちゃって止まっちゃうって思われちゃうのも嫌ですもんね。

トモヒロツジ あとあれですね。6月は作品の公開がありませんので、また7月からお会いしましょう。

osd そうっすね。

トモヒロツジ はい。

ykpythemind いや、俺ちょっと6月に作りたくなってるけど(笑)

トモヒロツジ ……。俺は次が始まるまでは映像のことを一切考えないからな。

2023/5/18 収録

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