車中泊に行ってきた
藤本薪 お疲れ様でした…!
ykpythemind 今はですね、「車中泊」を徹夜で撮ってきて各々仮眠した後、昼から編集を7時間ぐらいして、はい。その足で今、打ち上げとして都内某店舗に飲みに来ています(笑)藤本くんがこのまま記事録音しちゃえばいいじゃんみたいなことを言うので、録音し始めました。
藤本薪 話が深まってきたからさ。毎回、撮影大変だったね〜って話から入るけど、実は今回は今までと比べて撮影時のストレスが少なかったなって思ってます。なぜなら、撮影ロケ地に社会がなかったから。
トモヒロツジ 自分も同じこと思ってる。毎回街中で社会の目を気にしながら撮影してたから、あれがストレスだった。今回山の中で撮ったから、よっぽどなことがない限り、そういうカットインがないっていう前提でかなり気持ちにゆとりを持って撮れた。
藤本薪 結果夜明けギリギリだったけどね。
ykpythemind そうだったんだ(笑)俺はなんでツジたちめっちゃ談笑してるんだよ!リラックスしてんじゃねえって思ってたよ(笑) 結構遠くに来たし、夜明けが来たらもう撮れなくなってしまうから。
トモヒロツジ 今回はカメラ1つで、もう出たとこ勝負だったし1個1個撮っていけばいいだけだし。ゴールは割と見えてたから。
藤本薪 今回は車中泊がテーマでしたけど、そこに目をつけたきっかけなどありますか。
ykpythemind 俺が車中泊Youtuberとかを結構見てるんだよね。なんかカップルとかでミニバンとか改造して旅したりとか、1人でおしゃれな旅を撮ったりとか。日本以外にも韓国の人とかもやってたりとか。その内容がめっちゃ面白いとかはないけど、割とダラダラ見れる感じで好きなんよ。それでも、自分が車中泊するとなったら結構怖いよなぁと思って。
藤本薪 1人で夜に車中泊するの怖いよねっていう共通認識はあって。それを映像化しようってなったんだけど、「車中泊は怖い」だけじゃ新規性ないじゃんみたいな感じでツジくんが反対して(笑)
ykpythemind 俺がすげえ新規性を求められて(笑)そこで結構悩んで、2時間ぐらい3人で話し続けて出てきたのが、1人1台だけだから怖い、っていう前提を一旦逆転させるみたいな。なので、隣にもう1台知らない車が来るのとかどうよってなったんだよね。
藤本薪 あの、男の人しかわかんないかもしんないけど、公衆便所で、便器の台数ある中で、わざわざ隣に人来たらめっちゃ怖いみたいなのが今回の話と同じ気持ちなのかも。
ykpythemind あー、車っていうのは、男性の抽象化なのかもしれませんね。
トモヒロツジ 舞台装置だけ整えればっていうのはちょっと、踏み込みが足りないなと思って結構食い下がったところがあった。例えば車中泊も、ただ1人で泊まるだけだと、山の中に1人で探検に行っている人とかの話で置き換え可能だと思うんだけどさ。車や駐車場ってものに要素を組み合わせていって、その状況でしか表現できない怖さを詰めていったときに、初めてその設定とか舞台装置が代替不可能になって自分たちのものができるって発想があったんだよね。
藤本薪 今回議論したときに「in-factoメソッド」みたいなやつができて。作ろうとしてる舞台の怖さを並べてって、1個を逆転させるっていう。
ykpythemind めっちゃ創作の本とかに書いてありそうなやつだ。今回はプロットが煮詰まりすぎて、ちょっとまず車中泊って何が怖かったんだっけ?みたいなところをツジにめっちゃ詰められるもんだから(笑)
トモヒロツジ 結論として、自分は満足いかせていただいたんで。こだわってよかったと思います。
遠征ロケ
ykpythemind じゃあ今回作ったものの話するけど、これ今までで最長の尺なんすよね。最長かつ初めての遠征ロケでした。
トモヒロツジ 正直言って車を運転してく時点でかなりナーバスな気持ちだったところに、大雪の日がぶち当たってしまって。本当に絶望的な気持ちだったんだけど。
ykpythemind 初めに心折れたのが俺で、じゃあリスケする?みたいな雰囲気を出し始めてたんだけど(笑)
トモヒロツジ 今回、in-factoの3人に加えて友人2人に手伝ってもらってるんですけど、その5人が揃わないと成立しないと思ってたから。場所をここにしたら雪の影響少ないんじゃないかみたいなことを色々考えて。
ykpythemind もし静岡方面が駄目でも房総半島だったら雪は降らないから大丈夫だ!みたいな。
トモヒロツジ やっぱ鉄は熱い時に打たないとダメなんだとは思ってるからねえ。みんなのモチベーションとか、グルーヴも変わってしまう。それこそ遠征しなくてすむように違うプロットの作品を撮るとかの代替案も考えるくらいギリギリだった中で、実現可能なラインに落とし込めたのは良かった。
ykpythemind 東京からこれくらいの時間ででこういう場所行けるんだっていうのが分かったのも良かった。
トモヒロツジ そういえば、俺と手伝ってくれたosdくんの車と、藤本くんとユキト(ykpythemind)の車2台で向かって、俺とosdくんチームはすごく和やかに向かったんだけど、パーキングエリアに集合したら、藤本くんとユキトの車内はギスギスしてたとか言い出してこいつらマジかって思った。
ykpythemind そんな悪い感じじゃないよ。曲がらなきゃいけないところで曲がれなくて。
藤本薪 まあ一触即発ではあったかもしれないな(笑)
トモヒロツジ ギスってんじゃねえか。
土台がホラーか、装飾としてホラーを置くか
藤本薪 なんか課題とか、今後に活かしていきたいみたいなところはありますか?
ykpythemind 今回はYoutuberが撮ってるていの作品だから、めちゃくちゃ物事が鮮明に見える必要はないが、機材的にもっと明るく撮れると良かったなあと思ったり。
トモヒロツジ そうかな。今回のテーマにおいては、映像の品質に関しては割と満足いってるというか、まあこういうもんだよねって思ってる。むしろ、横に車がベた寄せしてくる怖さまでは描けたんだけど、オチを改めて見たときに、作品の流れからすると唐突なオチだったなって。おそらく現象自体は怖いけど、その現象をより怖く引き立てるための準備を、オチまでの13分の間の中にもっとちりばめておいたほうが良かったのかなって。
藤本薪 結局怖いものをぶち込んで終わらせてやったわって感じだったかも。これは暴力なんよ。
ykpythemind あー、そうね。逆に暴力じゃなくて、こう、オチない終わり方というのをする勇気がなかなか持てない。
トモヒロツジ これはin-factoメソッドの課題だと思ってるんですけど。誰が脚本や絵コンテを書くにせよ、プロットは3人の合意形成の上で進めてるから、説明できない怖さを作品化できないってとこなんだよね。
ykpythemind はいはい。分かる。
トモヒロツジ まあ文章とかでも説明できるはずなんだけど、それを3人の間で共有するのが非常に難しい。感覚とか漠然としたものを僕ら3人がある程度理解した上じゃないと進められないなと思っているからこそ、漠然としたものを理解させるのが難しくて。その結果論理的な落とし所に頼ってしまうのかもしれない。3人で合意形成をする手法としてそうなってしまいがち。
藤本薪 例えば、女神の継承 ※1 って、多分ツジくん的には説明のできる嫌さみたいなのが、いろんなとこにあったと思う。信頼できるはずの能力者が全然ダメみたいとか、失敗することが確定してる祭りを進めるみたいな嫌さがあったと思うんだけど。でも、コンジアム ※2 とかって、多分そういうのあんまないと思ってる。単純に舞台があって、精度の高い怖いことが起きるだけ、みたいな。
トモヒロツジ そうだね、コンジアムとかグレイヴ・エンカウンターズ ※3 みたいな作品は好きだけど、あれも結構暴力やなって思って見てるから、自分が作るものとは違うって認識してるかも。
※1 『女神の継承』(めがみのけいしょう、タイ語: ร่างทรง Rang Song、意味:霊媒、英題:The Medium)は、2021年に公開されたタイ・韓国合作のモキュメンタリー[2]超自然的ホラー映画。 (Wikipedia日本語版『女神の継承』より)
※2 『コンジアム』(原題:곤지암)は、2018年制作の韓国のホラー映画。 (Wikipedia日本語版『コンジアム』より)
※3 『グレイヴ・エンカウンターズ』(Grave Encounters)は、2011年に製作されたカナダの映画作品。(Wikipedia日本語版『グレイヴ・エンカウンターズ』より)
藤本薪 自分は、コンジアムやグレイブエンカウンターズの作り手全員が脳筋で挑んでたわけじゃないと思ってて(笑) 作り手は少なからず論理的なものを持ってるんだけど、それを暴力にまで昇華させている表現力があるんじゃないかなって思うよ。論理的にこうって話じゃなくて、もっと現象とか感覚みたいなところで強く論理的なんだと思う。
トモヒロツジ あのひとたちは、このタイミングでここにいたら怖い、とかここでこう見えたら怖いとかっていう感覚の怖さを論理として持っていて。それを重層的に、相互に関係させあいながら織り上げていってる技術があるのよ。
藤本薪 ミクロのところは感覚的に怖いホラーなんだけど、その下の土台にはドラマがあるみたいな作りをしてる。
ykpythemind その土台って、映画ってのもあって長尺だからできるものだと思うよ。
トモヒロツジ いや、土台にドラマがある、みたいな表現をできるようになったら、自分らも長尺を作れるんだと思うよ。
ykpythemind なるほどなー。
藤本薪 そう。Youtubeっていうフォーマットとか考えると、僕らがやってるのも1つの手段だなと思ってるけどね。
トモヒロツジ 日本のホラー映画のなかにも、土台を人間ドラマに置くパターンでうまくやれてるのとやれてないのはあるんだろうなと思ってて。年代で分けるのはあんまり良くないかもだけど、リングとか呪怨は、土台に人間ドラマがあるけどてっぺんのホラーとのバランス感がうまかったんだと思う。なんか「仄暗い水の底から」※4 とかそれ以降の流れ辺りから人間ドラマの比重が多くなっていって、別にホラーじゃなくても成り立つけど、ギミックとしてホラーを使ってない?って思ってしまうことがあって、やっぱホラーを根底に置きたいなと思った。
※4 『仄暗い水の底から』(ほのぐらいみずのそこから)は、鈴木光司のホラー短編集、およびその映画化作品である。水と閉鎖空間をテーマとした7編の物語が収録され、そのうちの1編「浮遊する水」が映画化された。(Wikipedia日本語版『仄暗い水の底から』より) 映画は2002年に中田秀夫監督が映画化したもの。
ykpythemind ドラマが根底にあるとやっぱり予算が取れるんちゃう?
藤本薪 まあ僕らはしっかり、予算がない中、土台をホラーに置いた上で、てっぺんに自分たちらしさを置く形式でやっていきたいよね。
2023/2/11 収録