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おやすみはメメント・モリなんです

おやすみはメメント・モリなんです

ykpythemind 今回はシーズン3の2作目っていうことで。なんなんですか。この話は(笑)

トモヒロツジ 今回は原案が俺で、ユキト(ykpythemind)がアップデートかけて、最終的に藤本くんが仕上げたみたいな感じですね。

藤本薪 この話の種はどこなんですか。

トモヒロツジ この話の種。

ykpythemind 映像にする時に自分が言いたかったのは、やっぱ「メメント・モリ」なんすよ。死を忘れるなと。

トモヒロツジ なんかユキトがアップデートしてきた脚本はそうなってたね。

ykpythemind ツジの原案は露悪的だけど詩的な感じで。

osd なんか画角とかも、ほぼ1人称視点でみたいな感じでしたよね。

トモヒロツジ そうそう。最初の元ネタは主人公が子供だったんですよね。子供の目線から見ると、色々なものが理解できないから、ぶっ飛んだことが起きていてもそれが受け入れられていて…。でも、それを第三者的に見ている人は明らかに大人だから、何が起きてるかわかって怖いみたいなのが、最初に考えたテーマだったんだよね。

藤本薪 うん。そこじゃないとこに着地した感じはある。

ykpythemind 1人称視点のものを作るのって難しいよね。その視点が子供なんだ、というのを見てる人に認識させるのが結構むずいなと思うし。

osd そうですね。

トモヒロツジ 自分が原案作ったときには画のイメージがあって。首がにゅって出てるシーン。僕だけが死ぬだけの百物語っていう。

僕が死ぬだけの百物語 - 的野アンジ (著)
僕が死ぬだけの百物語 - 的野アンジ (著)

トモヒロツジ 友達の家に遊びに行ったら、引きつった顔の友達が玄関から首だけ出して追い返すっていうのがあって。違和感を感じて家に帰ったあと、実は友達の家には通り魔が押し入ってたことを知って、主人公が追い返された時も実は…っていう話なんだけど。首だけ出てるところが、一応この話の元ネタなんですよ。

ykpythemind そうなんだ。

トモヒロツジ この友達と同じように、『おやすみ』の両親も、自分に起きてることが子供に気づかれないように守っているみたいな…。結果、無理な体勢を取ってもらったから、結構そういうニュアンスが出てて。

藤本薪 何のトリックも使わずに力技で意外とできるもんなんだな。

osd ロケハン行って、ツジさんが試した時は別にできてなかったですよ(笑)

トモヒロツジ なんかね、しっくり来てはなかった。これは合成うまくやるしかないなって言ってたもん。

藤本薪 なんかな、実際やってもらったら水平に出てんじゃん。

トモヒロツジ すごかったよ。完全にx軸しかないもん。

ykpythemind やっぱ役者さんの体幹ってことなんだと思うんだよ(笑) ツジの体幹がよわよわだったっていう。

藤本薪 僕らは全員体幹ないか。

ykpythemind 俺はプール通って、体が厚くなってきたからそんなことない。

osd 何の話?

トモヒロツジ 俺のその絵のニュアンスと、そういえばユキトのメメント・モリのテーマになった事件があるっていうね。

ykpythemind テーマになった事件はね…多分見てくれた人は数人はピンと来るかもしれないねっていう。気づいたらコメントでお願いしますっていう感じですね…。その、元ネタの事件とか、理不尽かつちょっと怖いよね。

トモヒロツジ なんか結局、やっぱそういうところに1番怖いものが転がっている感じするよ。うん。

藤本薪 いつ誰の身に起きてもおかしくないことだけど、人はそれを意識せずに過ごしてしまうよねっていう話じゃないですかね。

ykpythemind 深いテーマだな。

トモヒロツジ ラストの感じとかも、そういう現実への引き戻しを入れたっていうところがあるかもしれないよな。全体として、超常的な話にしないというか。

藤本薪 確かにホラーのまま、お化けとか悪魔とかのまま終わったら、他人事というか。

ykpythemind もうちょっと地続きの要素がやっぱりある。自分は結構、最後お気に入りなんだよね。

トモヒロツジ うん、あれもね、またいつか明かされるであろう、シーズン3の脚本の作り方によって生まれたやつね。

ykpythemind また「椅子」のときみたいに最後のやつで怒る人出てくるだろうなと思ってる(笑)

トモヒロツジ ワクワクしちゃうな。

osd 今までの作り方とかだったら、話の途中とかにも、あれをにおわせる要素を入れ込んでたような気がしてます。ちゃんと話として補助線を引いておいたと思うんですけど、今回マジでそれがなくて、いきなりアーティスティックというか。

手間暇かけたCGとAIゲーム

トモヒロツジ 今回osdくんが映像を非常に頑張ってくれたというのもあり。

藤本薪 あ、そうだそうだ。CGですね。最後のシーンのね。

トモヒロツジ あれもね、非常にチャレンジングだったし。俺的には去年「逆廊」を作ってホラー映画大賞に入選したとき、最終選考残った作品の長文のレビューを書いてくれた方がいて 。最後のシーンである重要なものをちゃんと映すのが作り手のプライドじゃないか、みたいなコメントをしてくれてて。

ykpythemind 俺もマジで思った。映さなきゃいけないものを技術的に映せなくて、画としては逃げてるんだよねえ。

osd 鼓舞されましたよね。今シーズンのテーマでもある、技術的なところでもできるのか怪しくても、とにかく頑張ってみるという。

別編集隊としてCG作業をするosd
別編集隊としてCG作業をするosd

藤本薪 引き続きまだありそうなんで、osdくんに技術班として頑張ってもらわないと。僕らみたいな人間が次やることなんだろうってなった時、CGの方に行くの変だよね(笑)CGを使った映画がすごい好きとかではないし(笑)

トモヒロツジ そうだね。やっぱり自分たちですべてを作れることが大事だから。

ykpythemind ぱっと作りましたというよりは、なんか一定、手間暇かけて作るっていう。えーっと、手間暇かければ良いものができるっていうのはちょっと嘘だと思っているが、良いものは大抵手間暇かかってるというのはある。

トモヒロツジ うん、そうだと思う。そう。プロセス的には今までは当日撮ったものがすべてでその日にガッと仕上げることを1つやってきたけど、もう少し分担してプリプロダクション・ポストプロダクションをやることでより良いものを作るというプロセスになってきた。

ykpythemind そう。今「逆廊」撮ったら、もっといいものできるもん。逆廊Reprise作らないと。

トモヒロツジ 次のホラー映画大賞に逆廊Repriseを応募するみたいなことがあれば、そんなやつらはちょっと嫌すぎるかもしれない。

藤本薪 何回撮ったっていいじゃん。音楽だったらやっぱ何度でも同じ曲録ったりするし。

ykpythemind そうね、ソルファ みたいなもんだね。

osd そこの例、ソルファなんだ。

トモヒロツジ 最後に脚本色付けして演技とか決めてくれた藤本くん的には今回どうだった?

藤本薪 大きく変えてはないんだけど、ドラマ仕立てになるってことが決まったタイミングから、ちゃんとドラマらしく作ろうって。見れる、ポップなものを作ろうって感じで作りましたね。

ykpythemind わかるよ。会話のところとか、やっぱり藤本くんが組み立てないとああならないんだよ。「まあ、なんとかなるよ」っていうセリフがね、本当に好きで。励まされるんだよね。

トモヒロツジ あれね、Passion PitのTake A Walkの気持ちかもしれん。

ykpythemind わかるよ。

ykpythemind こういう意味不明な話の中に、なんか1輪の花が咲いているみたいな…(笑)あのセリフが本当に好きだからさ。どの場面を切り取っても好きな場面がある。お気に入りの作品になったかも。

トモヒロツジ 藤本くんによって細やかなカットが増えたなと思ってて。例えば、リビングから出ていくときの閉まる扉だけのカットとか。魚を食べる時に首を切断するカットとか。俺、ああいうのがユーザビリティなんだろうなと思う。俺とかユキトやosdくんはああいうのに無頓着だから。

藤本薪 僕は他のみんなより、その人のキャラをちゃんとつけたいっていうか、ちゃんと魂を宿らせてあげたいなって思ってる。何を考えて、どういう行動原理でどういう行動をするのかっていうね。

ykpythemind 体のフジモト

osd マインドクラッシャー の時も、コメント来てましたよね。そういう、”魂を感じてる“ コメントが。

トモヒロツジ 思った。女の子いじりするおじさんとか…。今回のリビングでの両親の会話がさ、マジで実家にいた時の会話のニュアンスで嫌だった。

osd そういえば橋本さん(椅子の主演) は今回よくあんな難しい役をやってくださいましたよね。子供みたいな引きこもりの大人をやってくださいっていう。

トモヒロツジ 当日衣装着たら、完全にそれになってたから。

ykpythemind あ、そうだ今回話したいこと大量にあって。前日に2時間ぐらいでAIがゲームをつくりました(笑)

藤本薪 そうだそういえば。

ykpythemind ここでプレイできるようにしといたんで(笑)

藤本薪 スコアボード機能はないので、コメントでスコア教えて下さい(笑)

フォントや絵文字の雰囲気、全体の得点計算、敵の動く仕組みなどすべてAIが作ってきて、本当にすごい時代ですね
フォントや絵文字の雰囲気、全体の得点計算、敵の動く仕組みなどすべてAIが作ってきて、本当にすごい時代ですね

トモヒロツジ ユキトが作ろうって言ってたけど最悪なくてもなんとかなるかなと思ってて、音沙汰なかったからみんなギリギリまで触れなかった。

藤本薪 人が操作して音が鳴るって大事だよね。

ykpythemind わかる。

トモヒロツジ あのiPhoneが出た初期の頃のさ、飛んでくるフルーツを切るゲーム思い出した(笑)ああいうドーパミン(を出させる)ゲーム、みんなにやってほしいな。

ykpythemind すまないが、いろんな最適化がされてなくて、マジでゲームが重いっていう。

藤本薪 高い携帯を持ってる人はスコアが高くなる。

osd 今回で言うと、料理の撮影とかも結構大変でしたね。

トモヒロツジ 僕が前日に在宅の日に近所の魚屋に魚を買いに行ったり、事前に魚を全部焼いて粗熱を冷ましてから紙で包んで、冷蔵庫で保存して持ってくるみたいな、よくわかんない手間をかけてるんで。ウィンナーとかもね。

藤本薪 諦めればいいのに、どうしても魚の首を切りたいって僕が言ったもんだから。

トモヒロツジ 魚屋にアジの開きを買いに行ってカゴに入れてから、そういえば藤本くんが首欲しいって言ってたなって思い出しまして。これは俺が、俺が折れちゃダメなとこだなと。

藤本薪 ありがたい。まあできればやりたくないですね。今後も。

「ホラー」と明記する?

ykpythemind 今回はわかりやすく面白い話になったんじゃないかと思うけど、わかんないな。記憶消して見直したい。

藤本薪 人を選ぶ作品という感じではないね。

トモヒロツジ これからYoutubeのホラー好きの天井を届けに行かなきゃいけないはずだから。日本だとそれって100万人もいないはずだから(笑)ここからはもう届かせに行かないと広がっていかない可能性はある。

藤本薪 今って広告でホラーって言葉を使っちゃダメなんだよね。映画の広告で今やってるドールハウス もミステリーっていう言い方をしてるし、見える子ちゃん に関してはエンターテイメントって言ってて。ホラーって言葉は映画の宣伝で一切使わないことになってる。

ykpythemind え、なんで?

藤本薪 ホラーって書くと見なくなる人がいっぱいいるから。

トモヒロツジ それなんかわかるんだけどさ、作り手が市場原理に負けていいのかっていつも思っちゃうよね。数千万、数億のレベルで変わってくるとなると仕方ないと思うけどさ。

藤本薪 やるべきなのは、ホラーを隠すことじゃなくて、ホラーの面白さを伝えることだとは思うよね。

トモヒロツジ 別にホラーって書いたから人が見に来るわけじゃないけど、隠す必要もない、みたいなのが理想かも。

藤本薪 サブスタンス とかも全然ホラーって書いてないから行くし。

ykpythemind 逆に、ホラーって書いてないとみんなホラーとして見ない説あるよね。

osd 確かに。

ykpythemind 「なんかドキドキする話」くらいの捉え方で見てるとか。これはホラーなんだって思って見ると、怖く見えてくるみたいなさ。

osd カテゴライズとかに引っ張られる話はあるかもですね。

トモヒロツジ 俺、ロバート・エガースのノスフェラトゥ 見に行った時は、普通にファンタジーのつもりで見に行って、後でサイトとか見たらホラーって書いてあって、これホラーっていう棲み分けなんだと思った。

藤本薪 ホラーって僕らの周りでも、ホラーやってるんだって言った時、「ごめん、ホラー見れないんだよね」ってすぐ言う人っているよね。

ykpythemind 音楽やってますって言うと、ライブとか見に行きたいと言われるみたいな社交辞令を発動してもらっている感覚あるんだけど、ホラーに関しては、開口一番「ごめん、無理」みたいな(笑) これ、カレーの話になると「自分、辛いの無理なんだよね」ってなるのに似てる(笑)

藤本薪 本当に見れない人は見れない。

トモヒロツジ 俺が見れる側だから気づいてないけど、多分世の中には本当に見れない人がいっぱいいるっていうのは、うん、ホラー以外においてもある。

osd でも今回はそんな人にも面白い作品かなと思ったりしますけどね。

トモヒロツジ 常にひらけてるはずなんだけどな。気持ちとしては。

ykpythemind うん、今回、独特な後味がある話だと思うんで、是非見ていただきたい。

藤本薪 次回もぜひ楽しみにしていてください。ありがとうございました。

2025/06/26 収録

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