in-facto

映像と美術、hentai

映像で表現できることを増やす

トモヒロツジ はい。というところで、今回も撮影が終わりましたという感じでございます。

osd はい。

ykpythemind お疲れ様でした。

トモヒロツジ 実際脚本を書き始めたのが撮影の2週間前とかいう、 意味わかんない短納期で作った作品でしたね。

osd そうっすね。言われてみれば確かに短かった。

ykpythemind 最近時間が加速してるから何も思わない。余裕だったなっていう。

osd ほんとですか。

トモヒロツジ シーズン1を作ってる時に、in-factoメソッドみたいなものを編み出してからは、最初に考えたプロットをそれで肉付けするみたいな感じのをやってたけど、今回は逆にメソッド起点で音楽で言うサビの部分だけ先に作って、脚本として整えるみたいな作り方だった気がしますね。割とショートな映像ではあったけど、きちんと映像の世界観の中で表現したい怖さは一通り描けてたんじゃないかなという感じはしますね。

osd ですね、今回いつもと違うのは、しっかり俳優さんに出てもらったみたいなのがありますよね。撮影当日、ちょっと早めに集まって、 本当にこれで撮れるかみたいな話を多少した記憶があるんですけど。指示というか、どういう演技をしてほしいみたいなのも結構あやふやだったけど、出てもらった方たちの引き出しで色々いい感じに進んだのはあるかもしれないですね。

トモヒロツジ ヒトミを演じてくれた川瀬さんは、 俺が最初脚本書いた時にイメージしてたのとは違ったキャラクターではあったけど、しっかり物語への解像度を持って参加してくれて、すごく良い映像に着地をしたのがやっぱり役者さんはすごいと思ったね。

リンク: 川瀬知佐子

ykpythemind もう1つ、リョウ役で志波さんっていう方に出てもらったんですけど、初めはあんなにしっかり顔を映すみたいなイメージあんま沸かなくて。なんかというか、基本男性の顔が出てない中で最後映すのは、絵コンテを読んだ時点ではちょっと違和感あるんじゃないかっていう気がしてたんだけど。いざ、撮影になった時に、自然にこう絵の中に収まってるから、なんかいいなって思って。

リンク: 志波昴星

ykpythemind なんかやっぱこう、役者に引きずられて絵が変わるみたいなのって、あるんだなと感じて。役者さんによって自分のいい画の撮り方にも変化があるんだっていうのが結構衝撃だったってとこではありますね。

トモヒロツジ 確かにね、今まで あんまりなかった体験かもしれないな。今までの人が下手だったとかではなくて、今回の人が演技のうまさ以上にその空気感というか、自分の世界観が動きだったり見た目に現れているって感じが。

ykpythemind 今回はギリギリで募集かけて何とか二人集まってもらえて撮れたけど、もっとたくさん人を巻き込んだ撮影も考えていくべきかもしれない。

トモヒロツジ 1日で全部撮り切るっていうルールでやってると、俺らがめちゃくちゃ綿密なスケジュールを決めて最初1時間で10人の人呼んで、10人の人がいるシーンとって、次の人迎えに行って、みたいなことしなきゃいけないから、そこは1つ今の撮り方でかかってくる制約なんだなって感じはあるよね。

ykpythemind うん。

トモヒロツジ あとそう、単純にね、 出てる人が多いと当然ながら脚本としても撮影としても変数が増えるわけで。それを我々3人でコントロールしきれるのだろうか?っていうのがある気がしているね。

osd そうですね、うん。

トモヒロツジ なんかね、その、自分の脚本とかに対して、多分かなり俯瞰的な目線を持って見てないとコントロールしきれんのだろうなと 思うし。

ykpythemind ロケーションの問題もあるしね。

トモヒロツジ うん、そうね。人がたくさんいるならゲリラ的な撮影もあんまりできなくなってくる。

ykpythemind ぞろぞろ人を引き連れて。

トモヒロツジ そうそうそう、やばいからね。たくさんの人が動いてる映像撮るとこで大変なのはその制御だと思ってて、それで最近見た「ボーはおそれている」がマジですごかったって話。

アリ・アスター監督の最新作「ボーはおそれている」。アリ・アスター作品の中でも『へレディタリー/継承』から我々が受けている影響は大きい
アリ・アスター監督の最新作「ボーはおそれている」。アリ・アスター作品の中でも『へレディタリー/継承』から我々が受けている影響は大きい

osd あー、ですね、はい。

トモヒロツジ 画面の中、30人ぐらいの人間が全部それぞれに演技があって、それをワンカットで映し切るみたいなすごいシーンが何か所かあって、あれはその監督の脳がめちゃくちゃ開いてるからできるんだろうなって感じが。

ykpythemind 結局そういうシーンとかは別に1発その日に撮るというよりも、 スタッフとかがシミュレーションしてるんだろうしね。うん。

トモヒロツジ いや、そういうとこでいうとね、今多分最大ほぼ2人ぐらいなんだよね。だからそこの上限を上げていけるかっていうのは1つ課題なのかもしれないな。

ykpythemind 2人と見たホラーアクシデンタル。 (注釈: ホラー短編集。 in-factoとメンタリティが近いと内輪で話題 )

トモヒロツジ はいはいはい。

ykpythemind あれも言うて登場人物2人で、いや、そうなるよなみたいな。5分ぐらいの短編にしようとすると、情報量的にも2人がマックスぐらいなのかもっていう。

osd そうっすね、なんか顔が見えた状態でキャラクターがいるっていうのの上限は、結構あるような気がしますよね。顔が見えない状態で、作業員というか仕事とかその風景的な役割をするみたいなので複数人出てるみたいなのは結構短い動画とかでもあるような気はしますけど、3分とか5分とかの動画で、10人登場人物が 出てきても見る側も受けきれないみたいなのは、あるような気はしますよね。

トモヒロツジ そうね。でも3人4人ぐらいまではチャレンジしてみるのは今後ありかもしれないっすね。頑張れそうなら。

映像作品から学ぶ

トモヒロツジ 今回は撮影する前に、今までやってこなかった試みとしてそれぞれがお気に入りの映画をあげて、それをみんなが見てきて感想を語り合うというのをやってみました。1回みんなが好きな映像とはどういうものかというのをすり合わせてから映像作りましょうというところで、俺はフランスの「エヴォリューション」という映画をみんなに見てもらいました。

エヴォリューションより

osd 僕はamazonのオリジナルの多分23年とかに出た「saltburn」っていう映画を出しました。

saltburnより

ykpythemind で、俺は「パルプ・フィクション」ね。

パルプ・フィクションより

トモヒロツジ なんかチョイスからそもそも出てるよな。人間性がな。

osd そうっすね。

ykpythemind いざ感想戦をしようとしてみると、いろんなカットだったりとかに対しての注目度がやっぱ変わってきてよかったね、なんか。

トモヒロツジ そうだね、なんかやっぱりおこがましくもあるが、作り手と同じ目線で見るっていう経験は なかなかったから、興味深かったね。それはそれで。

ykpythemind 場所の場所と脚本の力ってやっぱすごいよなっていう。

トモヒロツジ うん、やっぱりどの作品も全然テーマと 何もかも違うと思うけど、やっぱりちゃんとロケーションってすごく作られてるんだなっていうのがさ、わかるよね。

ykpythemind あー。そう。

トモヒロツジ saltburnの細かい造形だったりとか。これとかはどっちかというと造形こだわってるってよりも、 使ってるものがすごいって感じがする。でもね、やっぱ宿舎の部屋の中とかの小物の解像度とかはかなり高い感じがしたし、どういうものをどう置いとくのかとかのこだわりはすごいよね。きちんと作ってる映画は。

osd 確かに。

ykpythemind まあまあ。大道具だったりとかとかね。本当に究極に究極のチームワークという感じがするよな。だから、 俺たちが取れる方法は中途半端に作ってもなかなかやっぱ難しいとこはあるじゃない。やっぱ本物の場所に行かないと。

トモヒロツジ そうなんすよ。本物の場所が全てを解決する。

トモヒロツジ 軽くそれぞれの映画のどういうのかっていうのを説明すると、エヴォリューションは近代文明と切り離されたような島の中で、 若い女性と子供だけが住んでて、そこで起こるミステリーなのかギリギリホラーなのかみたいな作品で、結構風景描写的な映画、静的な映画。saltburnは、オックスフォード大学に入ったちょっとイケてない学生が、イケてるやつと出会って、 そいつに魅力を感じて惹かれていくみたいな話なんだけど、

ykpythemind 『生涯忘れることのできない夏が始まった。』っていう…

トモヒロツジ 嘘すぎるキャッチ。

osd 違うレールを敷いたキャッチコピーでしたね。

トモヒロツジ 脚本がすごく重層的だったよね、saltburn。それが、オサダくんがL市の脚本を書いたところに通ずるものがあってね、こういうのが好きなんやなっていうのがすごく。

osd はいはいはい、言われてみれば

osd どの映画にもあるけど印象に残る1枚の絵みたいなの結構何枚もあって、なんかそういうシーンを作っていくのが映像作品としてはやっぱ重要なところなんだなみたいなのは、この感想会して、結構思ったところかもしれないです。

ykpythemind うん

トモヒロツジ 絵としての強さっていうのは、ロケーション的なあれなのか、画角の1枚としての決めの強さみたいな話なのか。

osd そうっすね。一定その文脈とかももちろんあるとは思ってて、見ててあのシーンよかったよねみたいなのが話せるところがあるというか

トモヒロツジ はいはい、ですね。

osd もちろんそこを強くするために、ロケーションの強さとか構図とか色々要素はあるとは思うんですけど。

トモヒロツジ そうだね。特になんかsaltburnとエヴォリューションはそういう1枚画みたいな強い感じだったかもしれないね。

トモヒロツジ 一方、パルプフィクションの内容は今更説明しなくてもいい気がするが、またちょっと違うんだよな。どっちかというと今話した2本がややアート寄りになってるのに対して結構娯楽映画だよね。バルフィクションは

ykpythemind 娯楽映画なのかな。

トモヒロツジ うん。俺は割と娯楽映画なのかなって思ったんだけど、

osd なんかコメディみたいな色が強いっていうのもあるかもしれないです。

トモヒロツジ そう、会話劇みたいな感じが。あれはあれでね、違う意味での脚本の凄さだし何よりも演者のすごさなんだろうね、きっとあの映画は。

ykpythemind なんかその、バカ映画になりすぎてないと思うんだよね、あれ。ちょっとシリアスな映画ですらあると思ってて。

トモヒロツジ うん、確かに、脚本だけで文字で書き起こしたら、割とコメディ要素ある感じがするんだけど、それを押さえつけるような重厚感というか。

ykpythemind あるね。

トモヒロツジ で、なんかね、めっちゃ主人公です。みたいな人がいたかというと、そうじゃない映画だったような気がしてて。「お話が軸である」みたいな映画じゃんね。役者が軸とかじゃなくて、そこがやっぱ、あんまり俺そういう映画見てきてなかったかもって思って、割とその気持ちで見たかもしれない。

ykpythemind ホラーのパルプフィクション。

トモヒロツジ ホラーのパルプフィクションをするためには、もうちょっと制作期間がいるよなぁ。

映像と美術、hentai

ykpythemind あと、やっぱ美術が大事なんじゃない?。

トモヒロツジ いや、頑張ってお面作ったけど。あれもね、できる範囲でベストを尽くしたとは思うけどという。

トモヒロツジが作成。目が見えない方が不気味なので裏から黒く塗った新聞紙がはってあり装着者は何も見えない
トモヒロツジが作成。目が見えない方が不気味なので裏から黒く塗った新聞紙がはってあり装着者は何も見えない

ykpythemind うん。

トモヒロツジ 単純に美術に関してはね、自分が作れないものは想像できんよなみたいなところがあるっていうね。上限を決めちゃってるところはあると思ってて。なかなか難しいところだね。割と俺が今まで色々ものづくりしてきたところで戦ってるから、今。

ykpythemind 美大。美大ですよ。やっぱ美大。

トモヒロツジ ちょっとね、こればかりはね。正直強い人が欲しいところあるよな。

ykpythemind そう。

トモヒロツジ 素人が出せる説得力に明らかに限界を感じている。

ykpythemind 『遊星からの物体X』。白石晃士監督のyoutubeでめちゃくちゃ好きな映画って言ってて。

トモヒロツジ 白石監督好きそうだな。

ykpythemind これは美術の仕事だなと思った。

トモヒロツジ やっぱね、なんだろう。一定以上できる人が初めて、かなり嫌なもの作れるんだろうなってのは思うかもしれないな。ある程度実力がないと、本当に嫌だと思うところまで近づけない。

osd そうっすね。最近やってますけど、DUNEってあるじゃないですか。あれとかも美術マジでやばいですよね。1作目にめちゃくちゃ太ったなんかおじさんみたいなのが黒い液体から出てくるみたいなシーンとかあるんですけど、あれとかもちゃんと中に人が入ってて、それも特殊メイクでやってみたいな。

ykpythemind リアルに勝るものないから。

osd うん。間違いないです。

トモヒロツジ そうなんだよね。結局やっぱね、実物を作って撮るのがね、1番強いよな。後からどうこうできるものじゃない。

osd うん、結局その怖いもの自体を出すみたいなのに抵抗というか、怖いもの自体を出すの、結構難しいよねみたいな話もあるじゃないですか。自分たちが作るホラーの中において。

ykpythemind わかるよ

osd そこで、怖いもの自体っていうのが映像として出てきちゃうからそこの威圧感とか、細部の作り込みとか、美術品としての精度みたいなのが求められる気がしていて。怖さの部分のインパクトに直結するからなかなかそこができないことには怖いもの自体を自信持って出せないみたいな。

ykpythemind ね。俺わかったんだけど、なんか自分でエロ本作れないじゃん。俺はエロ漫画描ける人ってマジで選ばれし美術の才能を持った人だと思ってて。漫画家という職業は尊敬する存在だけど、その中でもエロ漫画家、マジで尊敬する存在なんだよね。

osd なるほど。

トモヒロツジ うん、非常に同意するな。

ykpythemind 根源的なところっていう。恐怖と性ってなんか結構近しいところにある。あとお笑いね。

osd はいはいはいはい。

トモヒロツジ お笑い芸人と漫画家はマジですごいと思っている。

ykpythemind 自分らは今ホラーチャンネルだけど、やっぱエロとお笑いにも行きたいんだよね。

トモヒロツジ マジで過労で死んじゃうよ

ykpythemind どういうコンテンツかわからないけど、そのうちエロに挑戦してみたい気持ちもあるんだよね(笑)。

トモヒロツジ 割とホラーと近いじゃんね。ホラーに抱き合わせされてることってあるじゃん。そういう要素って。

ykpythemind うん。

トモヒロツジ でも、なかなかチャレンジできないね。勝算が見えなさすぎるからなのかもしれないけど

ykpythemind そう、でも、今までのワンテーマから一歩進むには、そういう複数のものをやっぱかけ合わせて深めていくしかない。と思うところですね。

トモヒロツジ そんなところですかね。1時間ぐらい話してるから(笑)

osd ほんとだ。

ykpythemind ではまた次の作品でお会いしましょう。

2024/03/28 収録

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