2026/09/19

『戸山凛さんについて』のすべて

撮れなかった断層散歩Vlogホラー

ykpythemind 今回は『戸山凛さんについて』を撮りました。

藤本薪 おお、ぬるっと始まった。はい、お疲れ様でした。

osd お疲れ様です。

トモヒロツジ どうですか?今回の作品は?

藤本薪 うん。今回はosdがイニシアチブを取って進めた作品になりますね。そういう作り方って他の作品だと何があるんだ?

osd 他だと何すかね。『調査報告:L市』?

トモヒロツジ 『逆廊』※1 とかもそうだね。

※1 第3回日本ホラー映画大賞 入賞作。サブスクで見られます。

藤本薪 そういうテイストね。

osd 割と今回は脚本とかコンセプトから自分が中心にやった感じですかね。

トモヒロツジ うん。

osd まあでもなんかあれですよね。これ見せたいとかこれ撮りたいみたいなシーンの部分はコンテベースにはなっているものの、その場で撮ったものとかちょくちょくあって、割とその辺が噛み合っていいバランスになったみたいな印象があります。

藤本薪 うんうん。なんかスタートは散歩動画撮ろうみたいな感じだったよね。

osd ああ、そうでしたっけ。

トモヒロツジ あれだよね。なんかブラタモリみたいなホラー撮るみたいな話。

ykpythemind ああ~、そうだった。

トモヒロツジ うん。そのコンセプトも良かったけどな。でもまあ遠くに来ていいところに着地したかもしれない。「映像を撮ってる人間なのか映ってる人間なのかわかんないけどなんかおかしい映像がある」っていうコンセプトではあったね、最初は。

osd そうっすね。割と芯の部分は変わってないのかな。

トモヒロツジ ま、そうね。何がブラタモリかって言うと、なんか断層?があって、それを辿っていく地質学ホラーみたいな話だったんだけど、地層でホラーは撮れないという現時点の結論が出たため。

ykpythemind そう、京浜東北線は断層というか、崖の下を走ってるっていう。

トモヒロツジ で、1回あれだよね。藤本くんとosdくんがそれぞれ脚本を書いてくるフェーズがあって、なんか脚本書いてくる時点でもうすでにこういう方向性ではあったよね。

osd そうっすね。なんか1回全部壊そうみたいな話に倒れかけて逆走しかけたんですが、 逆になにも変えないっていう方に戻ってきたというか。

ykpythemind 一周したよね。うん。初めて他人を信じたって感じです。初めて他人を信じた結果さぁどうなるのか。

osd めっちゃ言われてました。これで怖くなかったらosdくんやばいよって。

藤本薪 やな上司の「これ売れなかったらお前のせい」のやつじゃん 笑

ykpythemind 成果主義だから 笑まぁこれででもうまくいったらすべてosdくんの成果だから。

トモヒロツジ いや、でも俺も最初の案出し手伝ってるしな。

osd すり寄って来た。

藤本薪 僕らで言うとこの成果主義はその、数字というよりは怖さというか…。

トモヒロツジ 僕らの撮影終わった時の満足感にあるから。幸いそれはあったよね。

藤本薪 なんか理屈わかんないけどなんか怖えなみたいな。

ykpythemind うん。なんか理屈わかんないけど、まあいいかっていう。

トモヒロツジ あれじゃん。前回のメンバー向け動画と全く同じこと言ってるじゃん。「わかんないけど、なんか怖いこと起きてるからいっか」って。

藤本「自然だし、変なこと起きてるし、いっか(笑)」
藤本「自然だし、変なこと起きてるし、いっか(笑)」

トモヒロツジ でももうさすがに自分らが作ってるものってそういう目線でしか見れないよな。一応起こること分かって作ってるってのもあるし。

ykpythemind 本当はそれ良くないよな。なんか寂しくもある。理解を手放さないといけないよね。そのロジックを手放さないといけない。

藤本薪 チーム内で全部を説明して理解してもらうみたいなプロセスを経るとなんかやっぱね、凡庸なものができるんじゃないかってのは僕はちょっと思ってるんだね。

トモヒロツジ そこに4人いるからこそ、まぁ誰か2人ぐらいが怖いと思ってんなら怖いんだろうみたいな。そういうバランス感が大事なのかもしれないです。

osd、OFF HOUSEでカゴを売る

藤本薪 今回は監督を務めたosdくんのインタビューをね、限定動画で作ったんですよね。

ykpythemind 是非ね、見てくださいって感じ。

トモヒロツジ いいインタビューになったね。全然ふざけた感じじゃなくて、普通に。

osd 一瞬ふざけが通り過ぎたけど全体としては9割くらい真面目だった。

トモヒロツジ いや、でも必要な一幕だったから。

藤本薪 ここでも指摘しとくか。ペットケージを使った演出があったんですけど。これをどうしてもosdくんがやりたいというから、わざわざ10キロ以上もあるケージを買ったと。で、撮影の帰りにそれを売りに行ったと。どうしてもosdくんが家に置きたくないから。

ykpythemind なんか勝手に帰り道変えられてたもんな。

トモヒロツジ 俺ね、その瞬間を完全に把握してるんだけど。一旦帰りに高速に乗る前にコンビニに寄った瞬間、明らかにosdくんの目が「やっぱカゴ売ろ」っていう目になった瞬間があって。

藤本薪 そんな目あるんだ。

トモヒロツジ さすがにタイムスケジュールを勘案した結果売りに行ける、と思ってるんだと思ったら、結果として1時間押したからね。ありえないこと!

藤本薪 持ってるときは必要なものだけど撮り終わった瞬間もう邪魔なものでしかないから。そういう男なんですよ、osdくんは。

osd まあ、でもOFF HOUSE寄る話はもうめっちゃ前からしてましたよ。その打ち合わせとか、行く時からずっと。

ykpythemind でも誰もそれを許してなかったよね。

トモヒロツジ 誰も許してなかったけど、こいつはずっとOFF HOUSEを俺たちの深層意識にすり込んでた。あたかもそれが大して手間をかけずに帰りに寄れる場所であるっていう。

藤本薪 車があるうちに行っとこうって。

トモヒロツジ 全然相模湖から八王子まで下道で山走った時間意味わからんかったからね。

藤本薪 うん。しかも役者さんを乗せてたからその時。売るときも2人待たせてみたいな。で、カゴが売れて500円になったお金でなんかお詫びにジュース買おうって言ったらさ。「じゃあポカリ2本で」って言うから。ないよ、ポカリ2本は。若い女性2人に買ってくる飲み物がポカリ2本なわけない。

osd それしかないと思ったけど…。

本邦初、in-factoによる作品解説

トモヒロツジ じゃなくて、今回の話に戻すんだけど。これを読んでくれてる人のために一度osdくんの今作への見解を話してもらってもいいんじゃないか。

ここから本編のネタバレです

トモヒロツジ くだんのペットケージのシーンは何だったのかという話ですよ。

osd まあ、順を追って説明をすると。まずこの2人(戸山と佐藤)が旅行に行きます。で、旅行に行った先のある時点から、何かに取り憑かれるじゃないですけど、寄生されてるみたいな状態になっていって。映像を見ると戸山が変な行動をしたりとかが出てるんで、戸山の症状が進行してる風に見えるんですけど。実はその裏側で映ってないだけで佐藤の方が同じものに侵されていて症状の進行が早くて。

ykpythemind うん。

osd 最後のあのペットケージのシーンに関しては、もうそのなんだろうな、寄生されたら起きる中の1つの出来事が起こって、佐藤という人物が分裂して物理的に別れるみたいな状態になってて。

トモヒロツジ え、あれ分裂してたの。

osd 感染した元の佐藤がペットケージの中に入ってるみたいな感じになってますね。

ykpythemind 何回聞いても全然わからん。

トモヒロツジ 俺今初めて聞いたわ。分裂してるんだっていうのと佐藤の方が進行してるんだって思った。

藤本薪 いや、言ってはいたよ 笑

ykpythemind 映像としては佐藤が戸山を加害したみたいな見え方というか、戸山さんがどっちかというと被害者っぽく見えるじゃん。けどその裏で実は戸山さんが佐藤さんに成り代わった、みたいなストーリーも見える話かな、とちょっと思ってたんだよね。

osd そうっすね。全部事実ベースでしか出てないんでいろんな解釈はあるかなとか思いつつ。

ykpythemind ま、そうだよね。いろんな解釈がある。

osd 自分が作りたいものの核としては、被害者であるとか加害者であるみたいな立場がぐるぐる入れ替わったり本人がなんか分裂したり。なんて言うんだろうな。どっちが被害者でどっちが加害者で何がどうなってるのかみたいなことが、その物語通してぐるぐる変わり続けるみたいなことがやりたくて。

藤本薪 それで言うと、僕はずっとosdくんって「こんな画が見たい」で作ってるのかなと思ってたから。そういう思考なんだってのはちょっとびっくりしたんだよね。インタビューの時とかも。

osd もちろん見たい画ベースもありますけど、さらにその全体というか世界観を作ることでどう物語の起伏を見せるか、みたいなことを考えながら構成は作ってますね。

トモヒロツジ ちなみにペットケージのシーンはその画が見たかったのが先なのか、人が分裂するからあのシーンを撮ろうってなったのかどっちなの?

osd それでいくと、分裂するからってよりかは、人から隠れるみたいなモチーフがあって。

トモヒロツジ ああ、寄生されたときの動きにってことね。

osd はい。その設定の中で自分の中に出てきたのがあのペットケージの画だったって感じですね。

トモヒロツジ なるほど、そもそもストーリーの骨格になってる「何かしらが寄生すると症状が出る」みたいなの中に、人から逃げるようになるみたいなのが含まれていて、それを表現する演出とか画で見た時に1番ホラーっぽいのがペッドケージだと。でそうなると、それは分裂してんだよなって流れなのか。

ykpythemind なんか2個ぐらい超越ジャンプした?

osd まあでも誰が撮ったかわかんない映像が1つ紛れ込んでるみたいなのは脚本書く前からテーマの中にあったので。そのストーリーベースで組み立てた時にどうするのがいいかっていうので分裂したことになってる感じですね。なので、めちゃ飛んでるみたいに見えるけど、ストーリーとうまく繋げつつギミックとして折り込んだ結果みたいな感じですかね。

トモヒロツジ でもなんかそれが、「寄生された人が肉体ごと2つに分裂する」っていうストーリーに落ちるのがosdくんっぽいなって。2つに分裂するってさ、なんか一つライン超えてる感じするから。

藤本薪 うん。

osd そうっすね。自分としては撮ってる映像自体がファンタジーになってなかったらいい派かもしれないですね。今回の映像自体も一応現実世界でも起こりうる現象で全部収まってるのかなとか思って。

ykpythemind そうかな??

藤本薪 半透明の幽霊が出てきたりしないよねっていうことだよね。

トモヒロツジ まあ、そうだね。人がその、のけぞったり猫背になったりしてるだけだから。

ykpythemind うーん。

『おやすみ』もお母さんが真横に首を出してるだけ
『おやすみ』もお母さんが真横に首を出してるだけ

ykpythemind 前に仕事で納品した動画で、ニコ動みたいに動画にコメントが流れる仕組みを作って、リアルタイムで僕らでコメントを打って素材を作ったんですけど。その時osdくん一言もコメント打ててなくて。osdくんって空想を当て込むやり方できないんだろうなと思った。現実からのマジのボトムアップで行かないと無理みたいな。

osd そうですね。それはそうな気がしますね。1回自分の中でなんか決めてそっから登り始めるみたいなのにしないと色々無理かもしれないですね。

藤本薪 『それ』の撮影した時に、僕は割と逆で上側から考えるから。こういう設定にしたらどうかなって。「例えば黄泉の国的なものがあって…」みたいな話したら、「でも黄泉の国ってなくないすか」みたいなこと言われた。

トモヒロツジ

ykpythemind やばい会話すぎる。

トモヒロツジ まあでもそうだね。いわゆるトップダウンじゃないけど、仮にでも「黄泉の国」って置いちゃったら、もう「黄泉の国」だよなっていう話ではあるから。変にありそうなものに流れないってやり方なのかもしれないな。積み上げてくやり方は。

ykpythemind まぁ確かに。そこから繋がるとね、それはそれで強みだよね。

トモヒロツジ いや、でも人間がさ、2つに分裂する寄生虫ってどう考えてもボトムアップの概念じゃないでしょ。でもそれがボトムアップでできてる…。

藤本薪 うん。変なとこにボトムがあるんで。

ykpythemind これがボトムアップできてるのが1番怖いかもしれない。確かに。

トモヒロツジ あれは最終的には戸山さんも佐藤さんもおかしくなって、いなくなったみたいな感じなのかな。

osd そうですね。自分の中の答えとしてはもう佐藤はあの旅行中で入れ替わって、分裂してる方がインタビュー受けてて。

トモヒロツジ だからふわふわした感じだったんだ。

osd で、戸山はその症状が完全に進行しきる前に消えたって感じですね。

ykpythemind 初めて明かされた真実。

トモヒロツジ in-factoは説明をすることを避けてきたが、今回は別に説明したところで、多分誰もこの結末にたどり着いてないだろうからまぁいいだろうという気持ちがある。

藤本薪 うん。そうね。

トモヒロツジ これ読む前に同じ結末にたどり着いた人いたらメールください。一緒に作りましょう。ホラー。

ykpythemind 5人目のメンバーとして。

トモヒロツジ いやでも2人いたら毎回カゴ売りに行かなきゃいけなくなっちゃうからな。

ykpythemind いや、その時は1人のosdくんにカゴ売らせに行けばいいから。

トモヒロツジ あ、分裂した方のosdくんにね。

トモヒロツジ まあ、そうですね。なんかそういう非常に難しいストーリーはあるものの、作品自体は割と素朴に見られる良さはあると思います。あんまり無駄も足りないものもないぐらいの感じには。

藤本薪 通してみたときになんかいいなとはなったよね。

ykpythemind あれぐらいで見れるのがいいっすよね、やっぱりね。

トモヒロツジ 演者さん2人がよくコミュニケーション取りながら撮ってくれてたし。もう2人にカメラ渡して撮ってきてもらって、映らないように待ってるシーンとかもあったから。そういう生っぽさがより自然で良かったかもしれない。

トモヒロツジ では、今回は「戸山凛さんについて」でした。是非メンバー登録してosd監督のインタビューも見てみてください。面白いです。

osd よろしくお願いします。

ykpythemind ではさようなら。

トモヒロツジ それではまた次のホラーで。

藤本薪 会いましょう。